Thursday, September 08, 2005

「企業とその環境の理解及び重要な虚偽表示リスクの評価」(監査基準委員会報告書第29号)

監査基準委員会報告書第29号「企業とその環境の理解及び重要な虚偽表示リスクの評価」(2005年3月31日)

本報告書は、監査人が企業とその環境(内部統制を含む)を理解し、重要な虚偽表示リスクを評価するために実施する監査手続(リスク評価手続)の指針を提供している。

リスク評価手続の方法には、質問が含まれるが、本報告書では、経営者や経理責任者だけでなく、企業内の製造部門や内部監査の担当者、または異なる階層の従業員等への質問も有益であるとされている。また、虚偽表示の可能性についての監査チーム内の討議も重視されている。

監査人は、企業とその環境について、(1)産業、規制等の外部要因、(2)企業の事業活動等と会計方針の選択及び適用、(3)企業目的・戦略並びにそれらに関連して財務諸表の重要な虚偽表示となる可能性のある事業リスク、(4)企業の業績の測定と検討、(5)内部統制、を理解しなければならない。旧基準と比べ、事業リスクと虚偽表示リスクの関係が詳しく論じられ、また、経営者その他が行う企業の業績測定の理解が強調されている。さらに、内部統制の理解においては、自動化された内部統制の特徴が詳しく説明されている。

重要な虚偽表示リスクの評価において、監査人は、財務諸表全体としての評価と、取引、勘定残高及び開示に関する経営者の主張ごとの評価を行わなければならない。また、本報告書では、「特別に検討を要するリスク」と「実証手続のみでは十分かつ適切な監査証拠を入手できないリスク」という新しい概念が導入された。

JICPAジャーナル2005年6月号 P.92~110