Wednesday, February 22, 2006

「包括的長期為替予約のヘッジ会計に関する監査上の留意点」に対する訴訟について

「包括的長期為替予約のヘッジ会計に関する監査上の留意点(リサーチ・センター審理情報[No.19])」に対する訴訟について

2003年2月に公表された「包括的長期為替予約のヘッジ会計に関する監査上の留意点」に関して、外資系金融機関に勤務し金融商品を販売する者から会計士協会が損害賠償を求められた訴訟の経緯と争点がまとめられている。

争点の第1は、審理情報前文に記載された包括的長期予約の利益先出しの特性の記述についてである。原告は、このような記述は誤りであると主張したが、判決では、契約レートでの円換算額と個別為替先物予約レートでの円換算額を比較すると、そのような表現は必ずしも誤りではないと述べたうえで、「利益先出し」との記載は、会員からの照会の事実を紹介しているにすぎないとしている。

争点の第2は、審理情報は金融商品会計基準の実務指針の適用を不当に狭く解釈し、原告が販売している商品に対してヘッジ会計の適用を一切認めないような留意点を公表しているという原告の主張の正当性についてである。これについても、合理的な経営計画の期間として「通常3年程度」としているのは、実務指針の合理的な解釈であるとするなど協会の主張が認められた。

争点の第3は、いわゆるデュープロセスがふまれていないという原告の主張についてである。これも、判決では、審理情報の手続に違法性はなく、また、実務指針の内容を改変するものではないので関係者の意見聴取は不要であるとされた。

このように、協会の勝訴とはなったが、為替予約へのヘッジ会計適用に関し、われわれ協会会員の間でも認識が不十分であったことが、ブローカーにつけ込まれる一因となったことは否めない。反省材料にすべきであろう。

JICPAジャーナル2006年3月号 P.102~113

参考:この裁判の原告のホームページ